あらすじ:日本橋。江戸の匂いも残るこの町の一角で発見された、ひとり暮らしの四十代女性の絞殺死体。「どうして、あんなにいい人が…」周囲がこう声を重ねる彼女の身に何が起きていたのか。着任したばかりの刑事・加賀恭一郎は、事件の謎を解き明かすため、未知の土地を歩き回る。 (by Amazon)
このミス2010第一位。さすが。今回は、ガリレオ湯川先生じゃなく、加賀恭一郎刑事。
これまでの作品でもそうだったのだけど、加賀恭一郎が解決するのは、犯人逮捕じゃない。取り巻く複雑に絡み合った人間関係をひも解くように解決していく。
今回の作品も同じく、犯人の動機も解決ステップもそれほど驚くものはない。たぶん、このジャンル(ミステリー)に入れるのは申し訳ないぐらい、びっくりしない。
日本橋で起こった殺人事件から、加賀恭一郎は聞き込み捜査を行うのだが、それが元で家族や知人への不信感が募る。さらには、これまでの不信感のうっぷんが破裂しそうな勢いだ。それを事件とは関係ないのに、きちんと収めて行く加賀恭一郎の人情がものすごくすばらしい。
日本中の警官がみんなこんな人だったらいいのにとか思うほど。
作中、加賀恭一郎は「事件によって心が傷つけられた人がいるのなら、その人だって被害者だ。
そういう被害者を救う手だてを探し出すのも、刑事の役目です。」と語っている。
たしかに、殺人事件といった凶悪な事件には、かならずそれにそれに行きたった複雑な人間関係が直接的にも間接的にも起こっている。それを解決しないことには、誰も幸せになれない。そして、関係のない人間までもが捜査を通して大きなストレスを抱えるのも事実だ。
そういったことが、きっちりと描かれているところに東野圭吾の愛情を感じる。どの登場人物にも、愛情が注がれ、最後までぬかりがない。帯のコピーにも「味わったことのない読後感」とあったのですが、まさしくそのとおり。ミステリー小説特有の「あぁ!そうか」「しまった、やられた!」というような読後はなく、ほっとしながらも切なく、なんともいえない読後感が漂います。
作品は、聞き込み捜査を元にした短編集風。下町を歩き回る加賀恭一郎の目線、住民の目線がくまなく行き渡り、情景が目に浮かびます。読み進みながら、自分も下町を歩いているような気にもなり、映像が出来上がってしまいます。最初の聞き込みをしたお店、その隣、お向かい、駅周辺...と。
スキがなく、かつ愛情たっぷりで、加賀恭一郎シリーズの中で、一番スキな作品になりました。
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